認知言語学系研究室のイベント案内

6月1日 フォーラム

 

日時:6月1日(木)13:00〜
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方はtaniguchi.info_at_gmail.com までご連絡下さい (_at_→@) )

 

タイトル:人名の普通名詞化について
発表者:角出 凱紀 (谷口研 D2)
キーワード:メトニミー, ファセット, 構文文法, 語彙意味論
概要:従来の特定の人物を指示するのみとされる人名であるが、しばしば普通名詞のように扱われ 、(1) 「~という人」; (2)「~のような人」(e.g. I want to be an Einstein.) : (3)「~による作品」(e.g. I bought a Picasso.)といったように解釈されることがある。本発表では、件の現象に対して、メトニミーとファセット及び構文が与える影響といった観点から分析と考察を試みる。

 

5月27日 京都言語学コロキアム (KLC)

 

日時:5月27日(土)13:00〜15:00
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方はtaniguchi.info_at_gmail.com までご連絡下さい (_at_→@) )

 

タイトル:語彙分析からオントロジーへ: 意味役割付与における曖昧性の検討をとおして
発表者:神原一帆(立命館大学 言語教育センター/R-GIRO)・野澤元(京都外国語大学)・高橋武志(京都外国語大学[院])
キーワード:フレーム意味論,意味役割付与,QCM (Quantitative Corpus Method),参与可能性
概要:文における意味役割の分布は,文意の理解について考える上で一つの大きな問題を提示する.例えば,(1)と(2)はともに動詞をreplaceとするSVOの構文であるが,意味役割の配列が前者ではAGENT+OLD,後者ではNEW+OLDと異なっている.
(1) [ John] replaced [ the broken door].
(2) [ Psychology] replaced [ sociology] in many fields.
このように統語役割と意味役割が一致しない場合,聞き手は何らかの情報から,意味役割の配置を推定することが必要となる.しかし,どのような情報によってそれが行われているのかは,これまで明確にされてこなかった.
本研究では,名詞句の意味特徴や付加詞の有無といった一般的な情報が,意味役割配置の同定にどの程度寄与するのか調べるために,BNC Babyから抽出された331件の事例に対して,意味的,統語的特徴とともに,正解の意味役割配列を人手でアノテーションし,条件付き推論樹やランダムフォレストといった推論統計的手法を用いて分析した.
その結果,多くの事例については一般的な意味的,統語的特徴で意味役割配置の同定は可能であるものの,それだけでは不十分な事例もあり,参与者のより詳細な存在論的な情報が必要であることが示唆された.

 

5月25日 フォーラム

 

日時:5月25日(木)13:00〜
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方はtaniguchi.info_at_gmail.com までご連絡下さい (_at_→@) )

 

タイトル:漢語サ変動詞「感染する」の多義性の検討-共起関係および格体制を中心に-
発表者:白石 暖哉 (谷口研 M1)
キーワード:漢語サ変動詞、コーパス、多義性、意味拡張、捉え方、行為連鎖
概要:漢語「感染」およびそのサ変動詞「感染する」について、従来の辞書では「ヒトがウイルス/病気に感染する」という構文が掲載されるのみで、実際には「ウイルスがヒトに感染する」という構文が無視できない程度に観察される言語事実を反映していない。本研究の目的は、動詞「感染する」の包括的な意味記述を行うところにあり、上記の構文の差異は「捉え方(construal)」が関わる異義だとして、メタファー・メトニミー的意味拡張がもたらす多義的異義とは区別し、認知文法の行為連鎖を取り入れた分析を行う。この目的のもと、現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)を用いて「感染する」が出現する用例を収集し、共起関係や格体制を分析するのと同時に、「感染する」の他動性、さらには現れるヴォイスや格体制といった統語的特徴も調査する。

 

5月18日 フォーラム

 

日時:5月18日(木)13:00〜
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方はtaniguchi.info_at_gmail.com までご連絡下さい (_at_→@) )

 

タイトル:知覚動詞型分詞構文の分化に関する構文文法アプローチ
発表者:樫本 拳斗 (谷口研 M1)
キーワード:構文文法、分詞構文、知覚動詞、Figure-Ground、アスペクト、コーパス
概要:分詞構文が同時性を表す場合,一般的にはアスペクト的に幅がある事態はGroundとして分詞句へ,瞬間的なアスペクトをもつ事態はFigureとして主節で表されるとされており,早瀬 (2002:155) では分詞構文のFigure-Ground配置を決定する要因を「語彙レベル,つまり語彙アスペクトではなく,事態をどのように解釈したかという状況レベルでのアスペクトだ」と主張されている.この主張に対して,語彙や接辞の機能からだけでは説明できない事例を基に,特に分詞句に知覚動詞 (see, look, listen, hear) が生起する分詞構文の語彙的な制約とそれぞれの事態関係を考察していきながら,2つの事態をただつなぎ合わせただけでは導くことができない分詞構文の形式 [V-ing ... , NP VP...]が表す意味機能が分詞構文の分化の条件と関わっていることを主張する.

 

5月11日 フォーラム

 

日時:5月11日(木)13:00〜
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方はtaniguchi.info_at_gmail.com までご連絡下さい (_at_→@) )

 

・第一発表

 

タイトル:コーパスに基づく好き嫌いを表す動詞に後続する不定詞及び動名詞の意味・用法に関する考察-動詞dislikeを事例として-
発表者:瀬戸口 彩花 (谷口研 M1)
キーワード:動名詞・不定詞、認知構造、大補文推移、コーパス
概要:ある動詞に不定詞又は動名詞補部が後続する場合についてその意味の違いに関する研究は多様に行われている一方で、いまだ日本人英語学習者の正しい使い分けにつながっていない(佐藤 2011)。本研究の目的は、学習初期段階から使用される好き嫌いを表す動詞(like, love, dislike, hate)に着目し、各動詞が補部として不定詞及び動名詞を選択する場合について、実際のコーパスデータを基に共時的・通時的観点から比較・分析を行い、(i) 動名詞・不定詞の用法や認知構造の違い、(ii) dislikeが動名詞と結びつきやすい理由について考察を行い、動名詞及び不定詞の構造を区別するような新たな1つの概念を模索するところにある。さらに、動名詞・不定詞の適切な使い分けを指導する上での指針・留意点についても示唆を与える。この目的のもと、発表者は (a) 文主語にとっての主体的事態と客体的事態、(b) 大補文推移の影響という2つの観点から考察を行う。

 

・第二発表

 

タイトル:二重目的語構文と同一の形式をもつ別の構文について-NPX cost NPY NPZを対象に-
発表者:関 太壱 (谷口研 M1)
キーワード:構文文法、二重目的語構文、行為連鎖
概要:一般に、ある動詞に二つの目的語が後続する構文は二重目的語構文(SBJ VERB OBJ1 OBJ2)とされており、これら目的語の品詞は名詞である。そのため、詳しい議論がされぬまま、NPX cost NPY NPZは二重目的語構文であるという前提のもとで多くの研究がなされてきた。
本研究の目的は、(i)果たして上述の前提が正しいのかを、NPX cost NPY NPZと二重目的語構文の統語的・意味的制約の観点から批判的に検討し、これらは全く別の構文であると想定することの妥当性を主張し、(ii)この構文の多義とその意味拡張を行為連鎖の観点から考察するところにある。