日時:9月30日(土)13:30〜16:00
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方はtaniguchi.info_at_gmail.com までご連絡下さい (_at_→@) )
タイトル:アルタ語(フィリピン)の文法的特徴:機能類型論的観点から
発表者:木本幸憲(兵庫県立大学)
キーワード:語順、ヴォイスと能格性、存在文と所有文、名詞派生動詞、注意の調整と指示詞、言語と文化
概要:発表者は2012年よりフィリピンのルソン島でアルタ語(Arta, ISO-639: atz)の言語調査を行ってきた。本発表では、その言語に見られる特徴的な文法現象を、できる限り類型論の前提知識を必要としない形で説明する。特に取り上げるポイントは、
(i) 語順的特徴として、VSO語順を取ること
(ii) 格標示としては、能格・絶対格体系を示すが、フィリピンの言語のヴォイス体系が複雑であること
(iii) 動詞は名詞を派生させて作ることも頻繁に行われ、元の名詞の意味からは予測の付かない意味になることがあること、
(iv) 存在文と所有文が同一の形式で表されること
(v) 指示詞は3対立体系で、すでに注意が向けられているかどうかによって指示詞の選択が変動すること
などを主な特徴として取り上げる。
日時:7月29日(土)14:00〜16:00
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
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タイトル:構文文法と修辞技法:「構成の反復」の捉え直し
発表者:伊藤 薫 (九州大学)
キーワード:構文文法、レトリック、反復、複雑性、カテゴリー化・スキーマ化
概要:認知言語学ではメタファー、メトニミーをはじめとした修辞技法に関心が向けられているが、これらの他にも認知言語学の枠組みで捉えることのできる修辞技法は多い。構文文法では、表現間の同一性を捉えるために有用な構文と構成体 (construct)の区別、認可とスキーマ化の関係といった概念や、表現の頻度や使用文脈を考慮する使用基盤アプローチ (Usage-based approach)といった構成の反復を分析するのにふさわしい理論的基盤を備えている。本発表では、構成の反復に属する修辞技法や暗示引用を構文文法の立場から捉え直す試みを、実例や周辺分野の研究も踏まえつつ紹介する。
※明確な結論が出ている訳ではなく、研究プロジェクトの紹介といった位置づけの発表です。自由闊達な議論を期待しております。
日時:5月27日(土)13:00〜15:00
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
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タイトル:語彙分析からオントロジーへ: 意味役割付与における曖昧性の検討をとおして
発表者:神原一帆(立命館大学 言語教育センター/R-GIRO)・野澤元(京都外国語大学)・高橋武志(京都外国語大学[院])
キーワード:フレーム意味論,意味役割付与,QCM (Quantitative Corpus Method),参与可能性
概要:文における意味役割の分布は,文意の理解について考える上で一つの大きな問題を提示する.例えば,(1)と(2)はともに動詞をreplaceとするSVOの構文であるが,意味役割の配列が前者ではAGENT+OLD,後者ではNEW+OLDと異なっている.
(1) [ John] replaced [ the broken door].
(2) [ Psychology] replaced [ sociology] in many fields.
このように統語役割と意味役割が一致しない場合,聞き手は何らかの情報から,意味役割の配置を推定することが必要となる.しかし,どのような情報によってそれが行われているのかは,これまで明確にされてこなかった.
本研究では,名詞句の意味特徴や付加詞の有無といった一般的な情報が,意味役割配置の同定にどの程度寄与するのか調べるために,BNC Babyから抽出された331件の事例に対して,意味的,統語的特徴とともに,正解の意味役割配列を人手でアノテーションし,条件付き推論樹やランダムフォレストといった推論統計的手法を用いて分析した.
その結果,多くの事例については一般的な意味的,統語的特徴で意味役割配置の同定は可能であるものの,それだけでは不十分な事例もあり,参与者のより詳細な存在論的な情報が必要であることが示唆された.
日時:1月28日(土)13:00~15:00
場所:Zoomによるオンライン開催
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タイトル:言語理解時の自己分裂と自己投入
発表者:田中悠介 (福岡大学)
キーワード:メンタル・シミュレーション、自己分裂、自己投入
概要:人は言語を、その内容を心内でシミュレーションすることで理解している。そのようなシミュレーションの際、自己の行為を描写した文に対しては行為者視点、他者の行為を描写した文に対しては観察者視点が取得されることが明らかにされている。しかし、認知言語学における視点の議論を踏まえると、自己の行為を描写した文に対する観察者視点(自己分裂)や他者の行為を描写した文に対する行為者視点(自己投入)という可能性も考えられる。本発表では、これらの可能性を検証した実験の結果を報告する。
日時:9月24日(土)13:00~15:00
場所:Zoomによるオンライン開催
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タイトル:発語内行為としてのフィクション制作―フィクション化の単位について―
発表者:井上優大(京都大学[院])・佐藤雅也(京都大学[院])
キーワード:フィクション制作、発語内行為、言語装置、話し手の意図、フリ、フィクション化の単位
概要:フィクション作品のフィクション性はいかにして生まれるのだろうか。現代の哲学・語用論において主流となっている見方は「作品の著者が執筆にあたって行う行為の結果としてフィクション性が生まれる」というものである。では、その行為とはいかなるものなのか。それを説明する理論が依拠する立場は3つに大別できる。(i) フィクション制作は特定の言語形式に紐付いた発語内行為であるとする立場、(ii) 話し手の意図に基づいた発語内行為であるとする立場、そして (iii) 真剣な発語内行為を行なっているフリであるとする立場である。これら3つのいずれかに分類されるどの理論も「フィクション制作という行為は、一文もしくは複数の文から構成された、作品全体未満の発話単位で行われている」という共通の前提に基づいている。本発表は、「フィクション制作は作品全体という単位で行われている」ということを示し、この前提が誤っていることを明らかにする。その上で、理論 (ii) 及び (iii) に関しては、修正を加えることで保持可能であることを提案する。