日時:1月25日(土)13:30~
場所:総合人間学部棟 1107号室
・第一発表
発表者:朴敏瑛 (韓国外国語大学校日本語通翻訳学)
タイトル:局面と語彙アスペクト ―始動の局面を中心にー
キーワード:局面、語彙アスペクト(aktionsart)、限界、始動相
概要:現代日本語の時間表現の中には類義的な意味を持つ形式が少なくない。例えば、本発表の考察対象である「~しないうちに」も、動詞の表す動作や変化、状態がまだ始まっていない、開始の前の時を指している点で「~する前に」と共通している。「局面」とは、一つの出来事の持つ開始から終了までの内的過程の一部分を指し示しているが、未だ局面及び局面動詞についての研究は十分になされておらず、特に「~はじまる」と「~だす」などの類義表現の違いについてもほとんど解明されていない。従って本発表では、始動の局面を中心に、始動の以前の段階を表す「~する前に」と「~しないうちに」の違い及び始動の局面を表す「~はじめる」と「~だす」、「かける」についての考察を通して、局面及び局面動詞の捉え方の本質とは何かを追究し、特に動詞自体の持つ語彙アスペクト(aktionsart)が局面動詞(を含めて時間表現全体)の意味考察において極めて重要な手がかりになることを示唆したい。
・第二発表
発表者:萩澤大輝(神戸市外国語大学大学院)
タイトル:語形成のそもそもを考える
キーワード:認知言語学、語の存在論、同一性、ミーム、素朴理論
概要:近年、哲学の領域において「語の存在論」をめぐって議論がなされている。しかし、あまり言語学の知見を参照していないために議論が深まっていないように思われる。一方、言語学の領域においても、同一性や変化など哲学的に重要な観点が十分検討されないまま理論構築が行われている。
そこで本発表は主に次の2つの議論を行う。(i)哲学領域における語の存在論をめぐる議論に対して、認知言語学の立場から応答する。(ii)語形成における諸概念について、同一性や変化の観点から検討を行う。語の存在論については、語の典型的な存在論的ステータスをミーム(模倣によって伝達される振る舞いの慣習的パターン)と考えることで問題の解決を図る。語の同一性と変化については、素朴実在論を棄却し、概念化者による体制化の産物として語を捉える「構成論」を主張する。