時間: 6/25 (木) 13:00~ (Zoom開催)
発表者: 北原匠
タイトル:照応に対する構文文法的アプローチ
−前置詞aboutを含む完全関係代名詞構文と縮約関係詞構文の機能−
キーワード: 照応(WH疑問文と再帰代名詞の分布)、島制約、複合名詞句制約、前置詞特定的な構文、[NP1 that is about NP2]構文(FRC)、 [NP1 about NP2]構文(RRC)
要旨: Ross(1967)で提示された島制約(Island Constraint)の中でも特に複合名詞句制約(Complex NP Constraint、以降CNPC)は、WH疑問文の生成や再帰代名詞の分布等の照応現象でも中心的な事例に関して正しい統語制約を与えることが知られてきた。さらにGoldberg(2006)は、CNPCの中でも特にWH疑問文に対して意味的制約を考える研究を行っている。一方で、Ross(1967)は典型的にはCNPCで統一的にその振る舞いが予測可能である完全関係代名詞節(full relative clause、以降FRC)と縮約関係詞節(reduced relative clause、以降RRC)において、CNPCに従わないFRCとRRCが存在することを示している。それが前置詞aboutを含むFRCとRRCである。これらの節についてRoss(1967)は将来の課題としているが、Goldberg(2006)における意味制約のアプローチにおいても依然、未解決のまま残されている。発表者は前置詞aboutを伴うFRCとRRCの特異的な振る舞いの観察を通じて、FRCである[NP1 that is about NP2]構文とRRCである[NP1 about NP2]構文という意味的に区別される2つの前置詞特定的な構文を認定する。そうすることで、周辺的事例とされてきたこれらの2つの構文の制約を設けることが可能であることを示す。