京都言語学コロキアム(KLC)

今年度は諸事情により5月のKLCを開催することができませんでしたが、今月末(6月29日)に開催する運びとなりました。

菊地礼先生(長野工業高等専門学校)をお招きし、発表していただきます。

変則的な開催にはなりますが、ご興味のある方は是非ご参加下さい。以下にその情報を記載いたします。

日時:6月29日(土)13:00〜15:00
場所:総合人間学部棟 1107 号室および Zoom
(参加を希望される方は taniguchi.info@gmail.com までご連絡下さい)

発表者:菊地礼 先生(長野工業高等専門学校)

タイトル:直喩と肯定の関係

キーワード:比喩, 直喩, 肯定, みとめ方, 肯定極性

概要:本発表は日本語における直喩は、その形成において肯否(みとめ方)の文法カテゴリーが深く関与することを述べる。まず、「現代日本語書き言葉均衡コーパス」(BCCWJ)を用いた調査によって、述語として用いた直喩(○○のようだ)がほぼすべて肯定文として運用されること、連用修飾を行う直喩(○○のように[用言])の用言もほぼすべて肯定形式となることを確認する。その上で、なぜ肯定に偏るかを問い、直喩と肯定の親和性の原因を考察する。先行研究における比喩と否定の関係を整理したうえで、比喩において否定できるのはイメージの選択が適切であったか否かであり、比喩そのものを否定はできないことを示す。比喩は「事実否定性」(国立国語研究所1977)を有するため、命題・事象の真偽を改めて否定することができないためである。そして、肯定形式によって提示するのは、喩辞に託したイメージが対象を表現するために適しているという話者の適否の判定を反映する。また、このような適否の判定は直喩が「ようだ」のような証拠性に関与し、確からしさを表す文法形式を用いることからも見て取れる。このように直喩を形成する上での肯定の働きを述べ、最後に連用修飾として用いた直喩を肯定極性表現としても位置付ける。

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