京都言語学コロキアム(KLC)
日時:6月7日(土)13:00〜
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
(参加を希望される方は taniguchi.info@gmail.com までご連絡下さい)
発表者:佐川寛知 先生(神戸大学)
タイトル:「それって本当に彼が言ったことなの?」:引用表現研究における〈意図〉と〈公共性〉の再検討
キーワード:引用表現、公共性、多値論理、意図性
概要:通常、発話された文が示す事態は、発話者の認識を反映したものとして理解される。例えば、「俺はイギリス共和国連邦の天皇だぞ」と発話すれば、この文の示す事態を当該発話者が抱いたものとして理解される。しかし、引用表現の典型例である「引用文」は、文全体の発話者である引用者の事態認識が被引用者の事態認識を内包した入れ子構造をとる。例えば、引用文「俺はイギリス共和国連邦の天皇だぞって太郎が言ってた」は、主節〈太郎が―言った〉によって引用者の認識を示し、同時に引用節〈俺はイギリス共和国連邦の天皇だぞ〉によって被引用者の認識をも示す。また、引用節は主節の真偽値とは別に独自の真偽値をもつ。このように、引用文は通常の文よりも複雑であり、意味や表現効果の記述においては、Grice(1989/1998)を背景とする「意図性」に注目した語用論的な記述・分析が主流であった。そこで、本発表では、引用表現とその特徴・効果の記述で用いられてきた諸概念を整理し、引用表現ひいては引用文の記述・分析で重要なのは、「聞き手との意味」を基盤にした公共性にあることを示す。