7月10日(木)フォーラム
(1) a. 文脈:Dumbledore (me) は,Voldemort との関係を Harry に語るには十二歳も十一歳と変わらず幼すぎると思い,真実を伝えるのをためらった。
“Well, it seemed to me that twelve was, after all, hardly better than eleven to receive such information.
(Harry Potter and the Order of Phoenix ; 下線は発表者による(以下同様))
b. 文脈:Harry が使う「半純血のプリンス」の教科書を巡り,役立つ反面危険性を疑うHermione と対立。Ron (he) は Harry を擁護し,Hermione が Prince を嫌うのは魔法薬の腕が彼に劣るからだと指摘する。
“That was different,” he said robustly. “They were abusing it. Harry and his dad were just having a laugh. You don’t like the Prince, Hermione,” he added, pointing a sausage at her sternly, “because he’s better than you at Potions —”
(Harry Potter and the Half-Blood Prince)
(1a, b) は一見すると普通の比較構文の思われる。しかし,比較構文で使用される than 以下の構造で言及されているような「省略」や「削除」といった分析では不十分な点がある。
(i) than 以下の構造は主節で示されている要素を省略・削除が適応されたものと考えられている。しかし,分析対象は形容詞とその補部要素との間に比較対象 than Y が生起しているため,省略・削除分析は適応できない。
(ii) than 以下に生起する構造が節ではなく,単一の要素である場合は句比較と呼ばれthan は前置詞の一種として分析が成される。しかし,分析対象は形容詞とその補部の間にthan 句が生起する。than 句以外の前置詞が形容詞とその補部の間に生起する文構造は非文法的であるためアドホックな記述となってしまう。
以上の点を踏まえ,省略・削除といった変形操作を仮定せず,< X is more Adj than Y PP> という形式が持つ意味・機能をコーパス分析を通して構文文法の観点から分析を行う。本発表ではケーススタディとして 分析対象 <better than Y at doing/ NP> と比較構文 <better at doing/ NP than Y> に生起する要素の違いから分析対象に固有な意味・機能の考察を行う。