5月27日 京都言語学コロキアム (KLC)
場所:総合人間学部棟 1107号室およびZoom
タイトル:語彙分析からオントロジーへ: 意味役割付与における曖昧性の検討をとおして
発表者:神原一帆(立命館大学 言語教育センター/R-GIRO)・野澤元(京都外国語大学)・高橋武志(京都外国語大学[院])
キーワード:フレーム意味論,意味役割付与,QCM (Quantitative Corpus Method),参与可能性
概要:文における意味役割の分布は,文意の理解について考える上で一つの大きな問題を提示する.例えば,(1)と(2)はともに動詞をreplaceとするSVOの構文であるが,意味役割の配列が前者ではAGENT+OLD,後者ではNEW+OLDと異なっている.
(1) [
(2) [
このように統語役割と意味役割が一致しない場合,聞き手は何らかの情報から,意味役割の配置を推定することが必要となる.しかし,どのような情報によってそれが行われているのかは,これまで明確にされてこなかった.
本研究では,名詞句の意味特徴や付加詞の有無といった一般的な情報が,意味役割配置の同定にどの程度寄与するのか調べるために,BNC Babyから抽出された331件の事例に対して,意味的,統語的特徴とともに,正解の意味役割配列を人手でアノテーションし,条件付き推論樹やランダムフォレストといった推論統計的手法を用いて分析した.
その結果,多くの事例については一般的な意味的,統語的特徴で意味役割配置の同定は可能であるものの,それだけでは不十分な事例もあり,参与者のより詳細な存在論的な情報が必要であることが示唆された.