■ 学会・研究会報告 ■
    2018年の今までの仕事

  1. 言語処理学会第24回年次大会 (2018/12/09, 東京外国語大学) での発表 “そもそもヒトは逸脱文にどう反応するのか: 日本語文の容認度評定データベース (ARDJ) 構築の研究(第一期) から,容認度 (評定) の実態についてわかって来た幾つかの事柄” で使ったスライド [PDF]

  2. 言語処理学会第24回年次大会 (2018/3/13-15, 岡山コンベンションセンター) での発表 “Development of Acceptability Ratig Data for Japanese (ARDJ): An Intial Report (Kow KURODA, Hikaru YOKONO, Keiga ABE, Tomoyuki TSUCHIYA, Yoshihiko ASAO, Yuichiro KOBAYASHI, Toshiyuki KANAMARU, and Takumi TAGAWA)” で使ったスライド [PDF]

  3. 「文法の動的体系性を探る」の第二回研究会 (2018/2/11, 東京外国語大学) での発表「文法概念の最適化が妥当な記述と説明を与える」で使ったスライド [PDF]
      異色な発表かも知れません.論文としてまとめる必要があるような,ないような…

  4. 2017年の仕事

  5. 言語処理学会第23回年次大会 (2017/3/13-16, 筑波大学)での発表「容認度判定の実態調査の報告: その実態は不均一な反応からなる,バイアスのかかった心理評定である」で使ったスライド [PDF]

  6. 言語処理学会第23回年次大会 (2017/3/13-16, 筑波大学)での発表「容認度判定の実態調査の報告: その実態は不均一な反応からなる,バイアスのかかった心理評定である」で使ったスライド [PDF]

  7. 言語処理学会第23回年次大会 (2017/3/13-16, 筑波大学)での発表「言語学は事例をどう扱っているのか? 見本抽出から明らかになった扱い方の (意外な) 片寄り」(黒田 航, 浅尾 仁彦, 金丸 敏幸, 小林 雄一郎, 田川 拓海, 横野 光, 土屋 智行, 阿部 慶賀) で紹介した言語学研究書から見本抽出した事例データが (2次配布をしない条件で) 共有可能です.希望者は私までご連絡下さい.


  8. 2016年の仕事

  9. 認知言語学会第17回大会 (2015/9/10, 明治大学中野キャンパス)でのワークショップ発表「心理学的により現実的な容認度評定のモデルを求めて」で使ったスライド [PDF]

  10. 言語処理学会第22回年次大会 (2016/3/07-10, 東北大学)での発表「How are inflectional paradigms represented (in the mind)?」で使ったスライド [PDF]


  11. 2015年の仕事

  12. 認知言語学会第16回大会 (2015/9/12, 同志社大学)でのワークショップ発表「理論言語学の方法論を証拠に基づく医療 (EBM) との比較を通じて見直す」で使ったスライド [PDF]
      これは同名のLing x NLP研究会での講演の短縮版という位置づけです.

  13. 第9回 Ling x NLP 研究会 (2015/9/6, NII)での講演「理論言語学の方法論を証拠に基づく医療 (EBM) との比較を通じて見直す」で使ったスライド [PDF]

  14. 言語処理学会第21回年次大会 (2015/3/16-20, 京都大学)での発表「FCA meets grammar typology」で使ったスライド [PDF]


  15. 2014年の仕事

    なし

    2013年の仕事

  16. 言語処理学会 (2013/3/14, 名古屋大学)での発表「形容(動)詞の意味をフレームの係わり方について」で使った スライド [PDF]
      (1) 喚起の操作的定義 P を与え,(2) P に基づいて形容詞,形容動詞,形容名詞の意味を定義する方法を提案しました.(3) Formal Concept Analysis (FCA)を使って形容詞の体系分類を試作しました.(3) は予稿集に載っていません.(1, 2) は非公式のオンライン文書の形で公開されていた考察を整理したものです.


  17. 2011年の仕事

  18. 日本心理学会第75回大会ワークショップ「概念」(WS011) (2011/9/15, 日本大学文理学部)での発表「Beyond Superficial Embodiment Theories of Concepts (概念の "表面的" な身体基盤論を越えて)」で使った スライド [PDF]
      前半は怪しく,後半は敵を更に増やしそうな内容ですが,自分が正しいと思っていることを言わないのは苦痛なので,言いました.

  19. 日本英語教育学会第41回研究集会 (2011/3/29, 30)での発表「理工系の学生向けの聞き取り訓練」で使った スライド [PDF]

    こういうことを言うと人文系の英語の先生方からは疎まれたり嫌われたり恨まれたりするのは確実ですが,私が言っているのは誰かが言わなければならないことです.今の時点で私がこれを口にすることが自分の再就職にとって不利に働くことはありそうですなんが,私は不合理なことを見ると黙っていられない性分なので,そうなっても仕方がないと割り切ることにしました.

  20. 言語処理学会第17回年次大会 (2011/3/8-10, 豊橋技術科学大学) での発表「並列疑似エラー補正法を用いた「破格」な表現の(疑似)解釈」で使用した スライド [PDF]

  21. 言語処理学会第17回年次大会 (2011/3/8-10, 豊橋技術科学大学)での発表「日本語ワードネットの異表記対応と並行コーパスへの語義タグづけ」で使用した スライド [PDF]

  22. 第166会メビウス研究会 (2011/2/19, 京都外国語大学) での発表「転移修飾を構文交替として特徴づける」で使用した スライド [PDF]


  23. 2010年の仕事

  24. Kyoto Linguistics Colloquium (2010/11/27) での発表「言語の "自然態" を捉える言語理論の必要性 (reprise): 言語の「徹底した用法基盤モデル」とWittgensteinの「言語ゲーム」の統合の試み」で使った スライド [PDF]

  25. JCLA 11 のワークショップ「徹底した用法基盤モデルの展開: パターン束理論で「構文」が何かを再考する」での Kow Kuroda: Introducing Pattern Lattice Model as a Form of Extremely Usage-based Model の発表で使った スライド [PDF]

  26. Kow Kuroda, Jun'ichi Kazama and Kentaro Torisawa (2010). A look inside the distributionally similar terms. In Proceedings of The 2nd Workshop on NLP Challenges in the Information Explosion Era (NLPIX2010), August 28, 2010 (A satellite workshop of COLING 2010 Workshop, pp. 40-49.で使ったスライド [PDF]

  27. 黒田 航 (2010). 情報教育研究所主催公開研究会「理工系英語教育を考える」(2010年7月10日(土), 早稲田大学)での発表「英語教育は誰のために? 英語教育における "人文系バイアス" とその望まれざる帰結」に使ったスライド [PDF]

  28. 黒田 航 (2010). 東京大学での講演「黒田来航」(2010/03/11) で使ったスライドのセット:

    • Introduction to the Extremely Usage-Based Model (EUBM) of Language [PDF]
    • Extremely Usage-Based Approach to Syntax [PDF]
    • Extremely Usage-Based Approach to Semantics [PDF]
    • Extremely Usage-Based Approach to Pragmatics [PDF]

    この講演は PACLIC23 と他に要望のあった発表を(日本語で)再演することを目的として行われたものですので,過去の発表と重複が多いことはお断りしておきます.

  29. 黒田 航・風間 淳一・村田 真樹・鳥澤 健太郎 (2010). Web文書にも対応できる日本語異表記に認定基準. 言語処理学会第16回年次大会での口頭発表 (2010/03/11) で使った slides [PDF]

  30. 黒田 航・寺崎 知之(2010). 言語の「自然態」を捉える言語の必要性. 言語処理学会第16回年次大会テーマセッション「言語表現と言語の間」(2010/03/09) での口頭発表で使った slides [PDF]

  31. 黒田 航 (2010). 言語使用の質的解析で見える概念化と見えな概念化. 千葉大学スタートアップCOE「認知適応科学における概念研究」概念研究ワークショップ (2010/02/20) での発表で使った sides [PDF]

    • 私の発表は基本的に与太話 (visionary talk) が多いですが,これは自分の目で見ても相当に強烈な与太話です.
    • コメントなどを反映した発表後の改訂版 PDF

    2009年の仕事

  32. Kow Kuroda (2009c). Pattern lattice as a model of linguistic knowledge and performance. A talk presented at The 23rd Pacific Asia Conference on Language, Information and Computation (PACLIC 23), 12/03-05, City University of Hong Kong

  33. Kow Kuroda (2009b). Pattern lattice as a model of linguistic knowledge and performance --- Introduction to a "radically memory-based" model of language as an alternative to simple usage-based model of language. Kyoto Linguistics Colloquium, 11/28/2009, Kyoto University.

  34. 黒田 航 (2009a). パターン束の下での並列疑似エラー補正による意味構築 (日本認知科学会第26回大会) の発表で使う ポスター [PDF]

  35. 黒田 航・長谷部 陽一郎 (2009). Pattern Lattice を使った (ヒトの) 言語知識と処理のモデル化の口頭発表で使った スライド [PDF]

  36. 黒田 航・李 在鎬・野澤 元・村田 真樹・鳥澤健太郎 (2009). 鳥式改の上位語データの人手クリーニングの口頭発表で使った スライド [PDF]

  37. 2008年の今までの仕事

  38. 黒田 航 (2008d). コーパス事例の観察に基づく日本語清表現の記述的一般化,並びに自作例による妥当性の検証 [PDF]
    • 第26回英語学会ワークショップ「コーパス解析,作例,実験・調査を組み合わせた実証的言語研究法: 日英語の清掃動詞の分析を通じて」 (11/16/2008, つくば大学) での発表に使ったスライドです.
    • ワークショップ導入用のスライド [PDF]
    • 他の発表者の発表スライドもここから入手できるようにする予定です.

  39. 黒田 航 (2008c). (容認度の低い例の)作例を支援するツールの紹介. 第9回日本認知言語学会 (名古屋大学).
    • 発表に使うポスター [Poster (PDF)].
    • 紹介するツール (Excel 上で実行できる VBA マクロ) の exgen とその解説論文 [Paper (PDF)]
    • 実例集 [Excel workbook (XLS)] を追加します.これには生成文法風の派生をシミュレートした例も入れています.X => A X B タイプの変項の置換 (いわゆる付加 (adjunction) で A, Bは adjuncts (か arguments)) をうまく使うと) 基本的にはどんな派生でもシミュレートできます.ただし複雑な派生では,指定の列が長くなり,その分生成に時間がかかるのと,正しい時点で変項の導入し,それらを正しい時点で実現しないと望んでいる結果が得られないことがあるという点には注意して下さい.

  40. 黒田 航・仲本 康一郎 (2008). 日本語の用語法に見る<被害>の概念化: 語彙分析からオントロジーへ. 第25回日本認知科学会 (同志社大学).
  41. 黒田 航 (2008b). 事態性名詞の項構造と動詞の項構造の統合: PMAを使った日本語の支援動詞構文の分析とその含意. 言語処理学会14回年次大会発表 E5-1.

  42. 黒田 航・李 在鎬・渋谷 良方・井佐原 均 (2008). 複層意味フレーム分析 (の簡略版)を使った意味役割タグづけの現状: タグづけデータから派生する言語資源の紹介を中心に. 言語処理学会14回年次大会発表PB2-5.

  43. 黒田 航 (2008a). 言語処理学会14回大会チュートリアル「語彙意味論に基づく言語資源構築 (竹内孔一さん (岡山大学) と共同)」.


  44. 2007年の仕事

  45. ヒトがメタファー(表現)を使う理由: メタファーはヒトの思考のパターンか? 語りの癖か? [Slides (PDF)]
    ■ 東京工業大学中川正宣研究室内部発表会 (2007/12/03) で発表に使ったスライドです.これは第11回ヴァーバル・ノンヴァーバル研究会 (09/17/2007, 京都大学) で行なった発表の改訂版といった感じが強いです.とはいえ,まだ完成度は低く,利得行列を成立させる条件の定式化に関して,もう少し細部を煮詰める必要があります.
    ■ 今年の発表はこれが最後です.来年の言語処理学会まで発表はしないで,NICT のタグづけの仕事に専念します(笑)今年はタグづけの仕事を少しでも先に進めるため,特に国内での学会発表の回数を意識的に減らしました.その分,ちゃんとした成果を上げたいと思っています.

  46. 状況の超語彙的喚起の諸相: 表現(の意味)の非線形性の起源を考察する [Slides (PDF)]
    ■ 「言語・認識・表現」(LACE) 第12回年次研究発表会 (2007/12/01) での発表に使ったスライドです.英語学会での発表と前半部分に重複がありますが,後半は完全に別の話,PMA (Lexical/Superlexical) と MSFA (Lite) を使った文意の表現の話になっていて,認知科学会での発表の詳細化という面が強いです.

  47. 状況の喚起と文意の決定 (=/=構築): 生成辞書理論を超えて [Slides (PDF)]
    ■ 2007/11/10 の英語学会ワークショップ「語彙情報と文法現象」で発表に使うスライドです.

  48. Kow Kuroda (2007). MSFA-based Annotation of Texts for Semantic Information [Slides (PDF)]
    ■ 10/05/2007 の『言語理解とコミュニケーション研究会(NLC)』での講演に来日した Patrick Pantel さんに意味タグづけの仕事を紹介した時に使ったスライドです.彼はこの研究に対して非常に好意的でした (後日,"I enjoyed your presentation very much and learned a lot from it. I wish that there was more of this kind of work presented at our NLP conferences." という評価を頂いております.お世辞とは思いますが(笑)).
    ■ Pantel さん自身の研究も非常に面白いです (若くて将来有望).実際,幾つかのデモで紹介されている彼の研究は私の研究や Frame Semantics/FrameNet との係わりが深いと思います.日本語でも早く同じことができるようなって欲しいという強い希望を私はもっております.

  49. 黒田航 (2007). メタファー (表現) が使われる理由: ヒトの思考の癖の産物か? コミュニケーション上の適応の産物か? 第11回ヴァーバル・ノンヴァーバル研究会 (09/17/2007, 京都大学).

  50. 黒田 航・中本 敬子 (2007). 文彩を生じさせる語の意味の相互作用の実態は何か? MSFAとPMAを使った語彙的意味記述と超語彙的意味記述の統合. 第29回日本認知科学会(成城大学))
  51. Kow Kuroda, Keiko Nakamoto, Yoshikata Shibuya, and Hitoshi Isahara (2007). Towards a more textually, as opposed to conceptually, oriented metaphor research: A case study of How to Cook a Husband. Poster presented at the 29th Annual Meeting of the Cognitive Science Society (2007), Nashville, TN. で発表に使うポスターの1枚目 (PDF版)2枚目 (PDF版)です.

  52. 加藤 鉱三・黒田 航. Nを始めるでは,何を始めるのか? [PPT]
    Morphology & Lexicon Forum 2007 (06/30, 07/01/2007, 神戸大学)での口頭発表に使ったスライドを手直ししたものです.

  53. K. Kuroda, K. Nakamoto, and H. Isahara (2007). When nounce words behave like real words: A case study of the Japanese verb oso(warer)u [Poster (PDF)].
    ■ これは The 4th International Workshop on Generative Approaches to the Lexicon, 5/10-11, Paris, Franceでの発表に使うポスターです.

  54. 黒田 航・李 在鎬・渋谷 良方・野澤 元・井佐原 均 (2007). 概念の「乗物」についての考察. [Slides (PDF)].
    ■ 「言語理解」研究(会札幌コンベンションセンター, 1/31/2007)での発表に使ったスライドです.データとして扱われている日本語を除いて,全面的に英語です.これは事務局からの依頼で招待講演をして頂いた C. Fellbaum と N. Calzolari への配慮でそうなりました.なお,信学技法に掲載された論文 は日本語です.これには 改訂版 もあります.


    2006年の仕事

  55. K. Kuroda and K. Nakamoto. Remarks on Relational Nouns: With a Special Reference to Role-denoting Nouns and their "Co-arguments" [PDF].
    ■ これは12/16/2006の京都言語学コローキアム (Kyoto Linguistics Colloquium: KLC) での口頭発表に使ったスライドです.内容は今年の認知科学会での口頭発表の内容を言語学者向けに修正し,データを補ったたものと考えてもらってよいです.ただし,今回はメタファーに関する言及は割愛しました.
    「この泥棒ネコ(め)っ」「この野良ネコ(め)っ」「この化けネコ(め)っ」のような名詞一語発話の理解が本質的に状況依存であることを指摘するのが狙いの一つでした(これは,表面的には尾上 (1998) の主張を同じです).これは12/10の第9回語用論学会のワークショップ「語用論と構文の使用」で横森・山嵜が取り上げた「(オネーサーン; オニーサーン) お醤油ー」と「?(オネーサーン; オニーサーン) お酢ー」対比,「(オネーサン; オニーサン) (お)刺し身ー」「???(オネーサン; オニーサン) 切り身ー」の対比,の指摘に触発されたものです.「お醤油ー」は多くの飲食店で通用する一語発話でしょう.それはこの発話が<テーブルに置いてあるはずの調味料の欠品の通知>であり,<欠品の解消の要求>を意図するものであるからです.ですが,「お酢ー」は中華料理店以外では通用しないでしょう(また「醤油ー」も西洋料理店の一部,例えば高級フランス料理店では通用しないでしょう).「お醤油ー」に較べて「お酢ー」に違和感を感じるとしたら,それは中華料理店での典型性が低いためでしょう.「刺し身」は多くのお店で品目にあがっている名称ですが,「切り身」はそうではないことが,この違いの原因です.これが「(お)刺し身」には<飲食店での注文>の(「(お)刺し身ー」には<注文した品の催促>の)喚起の力があるが,「切り身」や「切り身ー」にはそれがないことの原因の一つことです.これは日本語に堪能な話者であれば誰でも知っていることですが,けっして自明のことではありません. 名詞一語発話の問題を,自明性を避けて定式化するには,「どんな状況で,どんな名詞が単独で,どんな言語行為を遂行できるか」という形で問題を定式化しないと意味がないわけですが,これに後知恵でない説明を与えるには,(i) 名詞の状況喚起力の有無(ないしは強弱)がわかっていること,(ii) 状況喚起力の強い名詞については,それが喚起する具体的状況の一覧が与えられていることが必要ですし,確証バイアスを回避するには,それは当然,説明とは独立になされていなければなりません.私たちが進めている状況のデータベース化は,この意味でも重要な役割を演じるハズです.

  56. 前置詞の項構造というものを (ちゃんと) 考えてみる: withoff を例にして,PMA と (MSFA) を使って [PDF].
    ■ 英語学会ワークショップ「前置詞の意味,助詞の意味」(代表者: 加藤鉱三) の発表で使用する Keynote スライドです.「(MSFA)」と括弧入れになっているのは,今回は MSFA は脇役だからです.
    ■ この発表のための参考資料として PMA を用いた off が現れる構文の体系的分析 があります.ワークショップでの発表の後半で紹介する結果は,この研究に基づいています.時間がなくて十分に細かく内容に触れることはできないと思われます.

  57. Developing a Japanese Corpus Annotated for Frames and their Elements: Specifying What People Understand with MSFA [PDF].
    ICCG4のために来日した Berkeley FrameNet の Charles Fillmore 教授と Michael Ellsworth 氏に NICT で行われている意味役割タグづけの仕事を紹介したときに使ったスライドです.
    ■ このプロジェクトの紹介の文書 [PDF (English version)]もあります.

  58. 中本 敬子・黒田 航・楠見 孝 (2006). 喩辞名詞意味特性が隠喩形式選好に与えるの影響: 意味役割理論に基づく役割名と対象名の区別から. 日本認知科学会23回大会でのポスター発表 (S-10).
  59. K. Kuroda, K. Nakamoto, and H. Isahara (2006). Remarks on relational nouns and relational categories. 日本認知科学会23回大会.
  60. 黒田航 (2006): PMAを用いた構文「効果」の記述法: 「構文的意味」は複数の語の取り合わせによって分散的に喚起される超語彙的意味である. KLS 31 (甲南大学, 2006/06/10, 11) のワークショップ『日本語の構文研究の新アプローチ: 「意味と形式」再考』 (10日 10:00--12:00).
    • 黒田の発表のスライド [Slides (PDF)]
    • 中本敬子さんの発表「語順は超語彙的意味と相関する」のスライド [Slides (PDF)]
    • 李 在鎬くんの発表「名詞の制約の階層化と文意の問題: 分類木に基づく一般化」のスライド [Slides (PDF)]
    • 永田由香さんの発表「語順における名詞句の意味制約」のスライド [Slides (PDF)]
  61. 黒田航 (2006): 文中で名詞句が担う意味役割は「曖昧」なのではなく「複合的」である: 複層意味フレーム分析 (MSFA) からの知見. Morphology and Lexicon Forum (東大駒場, 5/13, 14) の特別セッション『意味役割の新展開』 (14日 10:00--12:10)
  62. 言語処理学会12回大会でのポスター発表 複層意味フレーム分析をシソーラス化する試み (黒田・井佐原 2006a) で発表に使った ポスター [PDF] です.
    ◆ この発表の 増補改訂版 [PDF] です.

  63. 言語処理学会12回大会でのポスター発表 「逃れる」の階層フレーム分析とその意義: 「言語学・心理学からの理論的,実証的裏づけ」のある言語資源開発の可能性 (中本・黒田 2006a) で発表に使った ポスター [PDF] です.
    ◆ この発表の 増補改訂版 (未完) [PDF] です.

  64. K. Kuroda, K. Nakamoto, and H. Isahara (2006). Situations as attractors of semantic interpretations [PDF].
    ■ これは Corpus-based Approaches to Noncompositional Phenomena というワークショップ (Deutsche Gesellshaft fur Sprachwissenschaft (DGfS), 2/22-24/2006) で口頭発表したときに使ったスライドのPDF版です.因みに,このワークショップは非常に面白く,有意義でした.いずれ参加記を書きます.

  65. 2005年の仕事

  66. 語句の意味記述の前に文の意味記述を: (計算機用の)辞書に書かれている語句の意味と,文を通じて実際に理解される語句の意味の間の隙間を埋めるために
    ■ これは 12/15 (2005) の「京大/NTT 合同研究会」で私が話題提供のときに使った Keynote スライドです.
    ■ それにしても,一週間前にイキナリ仕事をふられまして,困りました (事前にわかっていたのでしたら,もう少し早く知らせて下さいよ... これは上司への小言です)

  67. Specifying What People Understand with MSFA
    ■ 11/29 に開催されれた 自然言語処理と画像認識に関するシンポジウム: 長尾眞先生の日本国際賞受賞を記念して の自然言語処理セッションのパネルに参加するために訪れた Nicoletta Calzolari, Eduard Hovy, Key-Sun Choi の3名は,前日の11/28 にNICTを見学に訪れました.その時に,私は彼らに研究紹介をしました.その時に使ったスライドがこれです.三人のうち,Hovy 氏は MSFA の方向に特に好意的で,幾つか非常に有益な示唆をもらいました.

  68. 11/12の第23回英語学会のワークショップ『結果述語の意味論』で「結果述語と結果構文の定義を再考する: 共述語分析の観点から」という発表をしました.
    • 発表に使ったスライド [Slides (PDF)]
    • 共述語分析の基盤になっている Pattern Matching Analysis (PMA) の入門には PMA 入門1, PMA 入門2 をお薦めします.原典は私の博士論文ですが,英語の分析が中心なのと,現行の枠組みよりほんの少し古いのと,それ以上に長大である難点がありますので,お薦めはしません.
    • なお,現在,影山先生からの発表に寄せられたコメント(「John made the metal flatflat は (結果述語の定義から) 結果述語とは呼ばない」)に対する私の答えを補足するノートも準備中です.論点は三つあります.第一に,flat/X make Y __ が結果述語かどうかは,X hammered Y Z の意味論が X make Y flat の意味論に「寄生」しているというモデル化の妥当性とは関係がない (結果構文の解釈モデルが結果構文である必要はそもそもないので).第二に,それとは別のレベルの問題として,flat/X make Y __ のような項を結果述語の上位クラスだと考えると,使役変化文 (X make Y flatflat が結果述語だろうとなかろうと,文としては使役変化文なので) と結果構文の繋がりを明示し,構文ネットワークの全体像がすっきりさせる(「結果構文は使役変化文の特殊な場合である」という一般化が結果構文の意味解釈の基盤に LCS: [[x ACT ON y] CAUSE [(y) BECOME [y BE AT-z]]] のような抽象的な構造を仮定しないでも得られる) という効果がある.LCS のような決して表層にはそのままの形では現われない「不可視な構造」を説明に用いないことは説明の検証可能性,妥当性を高めるの三つです.
  69. 9/20/2005に東京工業大学の中川正宣(まさのり)先生の研究室で複層意味フレーム分析を紹介する発表をしました.
    • そのときに使ったスライド [Slide (PDF)]
    • 基本的には JCLA での発表を流用したものですが,心理学者が理解しやすいように新たな内容を部分的に付け加えてあります.特に The millionaire married a starThe astronaut married a star の解釈が得られる際のフレーム統合の違いは,今まで明示したことはなかったように思います.このファイルには FOCAL Wiki にある意味役割タグづけ結果へのリンクが載っていますが,これらのページにアクセスするにはアカウントとパスワードが必要です.興味のある方は私の方までご連絡下さい.ただ,現在私たちが準備中のリリースノートなしでこれらの結果を見ても,タグづけの詳細は不透明かも知れません.

  70. 今年の第6回日本認知言語学会 (JCLA 2005) で口頭発表「多層意味フレーム分析 (MSFA) による文脈に置かれた語の意味の多次元的な表現」 (黒田・井佐原 2005) を行ないます (9/17 第5室 15:00-15:40).予稿集に載る論文の 原稿 (PDF) を公開します.

    UPDATE (09/14/2005)
    本発表に使う Keynote スライド (PDF) を公開します.本番前に修正がある可能性はあります.その点はご理解下さい.

  71. 今年の第6回日本認知言語学会 (JCLA 2005) で口頭発表「『yx から逃げる』の理解内容の階層的意味フレーム分析」 (中本・黒田 2005b) を行ないます (9/18 第4室 12:10-12:50).予稿集に載る論文の 原稿 (PDF) を公開します.

    ■ はじめは第二著者の私が第一著者の中本敬子さんに代わって発表する予定でしたが,第一著者が発表することになりました.というわけで,この発表に関しては「黒田節」はなしです(笑)

  72. 今年の第6回日本認知言語学会 (JCLA 2005) のワークショップ第二室「コーパス利用とこれからの認知言語学: 用法基盤主義をカケ声で終らせないためには,何を,どうするべきか」 (9/18 15:40-18:00) の予稿集に載る 企画紹介 (PDF) と私の口頭発表「コーパスという生態系に語句の意味を探る: 海洋生物学者が海に生物の生態を探るように」 の 原稿 (PDF) を公開します.

    UPDATE 1 (09/??/2005)
    去年 CogLing で Annual Reviews of Cognitive Linguistics に載った Stefan Th. Gries の論文 が火つけ役になった認知言語学の方法論的基盤に関する論争の内容を個人に評価したエッセイ 「純粋内観批判」 (PDF) もワークショップでの議論の参考資料として公開します.

    UPDATE 2 (09/13/2005)
    私の発表の際に用いる スライド (PDF) を公開します.本番の前に修正する可能性もありますから,その場合にはご了承ください.

    UPDATE 2.1 (09/27/2005)
    ■ 金丸敏幸が発表に用いた スライド (PDF)
    ■ 黒宮公彦が発表に用いた スライド (PDF)
    ■ 濱野 寛子李 在鎬が発表に用いた スライド (PDF)

    を公開します.

    UPDATE 3 (09/17/2005): 「襲う」の HFN 構築の際に自作した フレームの同定とフレーム要素の認定データを公開します.これは HFN 構築に使った日英対訳コーパスから得られた413例のうち,公開可能部分に現われている90例のみです.

  73. 08/08-10 に主に京大の山梨研究室の院生を対象に行なった「統計勉強会」の第一セッションで「言語データのコーディング入門: コーパスに潜むどんな情報をいかに探りだすか」の講師を務めました (自然言語処理ツールの使い方の初歩に関する解説は 金丸敏幸 くん,言語学者向けの統計手法の解説は 中本敬子さん が担当なさいました).私の講義の際に使った スライド [PDF] が JCLAのワークショップでの自分の口頭発表も意識した内容だったので,それもついでに公開します.

  74. 認知科学会第22回大会 での発表「意味解釈の際の意味フレームへの引きこみ効果の検証」 (黒田・中本・野澤・井佐原 2005) の発表論文集に載る 原稿 [PDF] です.

    UPDATE (07/30/2005): 発表に使用した ポスター (PDF)参考資料 (PDF) です.

  75. 第168回自然言語処理研究会/言語理解とコミュニケーション研究会 で「意味役割名と意味型名の区別に基づく新しい概念分類の可能性: 意味役割はシソーラスを救う?」 (黒田・井佐原 2005c) という発表をします.その 提出原稿 (PDF) です.
    ■ ページ数制限で割愛した部分を補った 増補改訂版 (PDF) もあります.
    ■ なお,これは「意味フレームの理論は意味役割の理論である」という題で公開していたオンライン論文 (ファイル名は theory-of-semantic-roles.pdf) の改訂版となり,元の論文を置き換えます.

    UPDATE (07/23/2005): 07/23/2005の口頭発表の時に使用した スライド (PDF) です.

  76. 7/17-7/22にソウルで開催された 9th International Cognitive Linguistics Conference (ICLC 2005) で行なうポスター発表 "ID Tracking Model" Replaces "Billiard Ball Model" of Conceptualization の 原稿 (PDF)です.
    ■ 制限枚数では詳細を記述できなかったので,それを補った 増補改訂版 (PDF) も容易しました.
    ■ 発表に使った ポスター (PDF) です.
    ■ それにしても,私たちの発表が一時的にポスターセッションから消えたりして,何だか今度の ICLC の運営はメチャクチャですね(苦)

  77. 私は7/7/2005に,東大 音声・言語・コミュニケーション研究会 で「表層格フレーム辞書と意味フレーム体系の対応関係に関する考察」と題する講演をしました.その際に発表に用いた スライド (PDF) を公開します (ただしスライドは全部で88枚あり,サイズが12MB強ある巨大なファイルですので,高速回線利用者でない方にはダウンロードはお勧めしません).
    ■ 発表に先だってお知らせした概要は以下の通りです:

    語の表層分布に基づいて(自動)構築される(表層)格フレーム辞書 (河原・黒橋 2002, 2003, 2005; 笹野・河原・黒橋 2004) (cf. 動詞の結合価辞書; 荻野ほか 2003) は自然言語処理 (NLP) の分野で重要な研究資源としての用途が確立し,すでに自動構築の手法すら確立しつつある.この一方で,手動であれ自動であれ,何らかの仕方で構築された格フレーム辞書がなぜ有効であるかに関する理論的基盤は薄い.
     格文法(Fillmore 1968, 1972; 山梨 1983)の主張が NLP の分野で額面通りに受け止められていた頃は,格解析とは表層の多様な格パターンを数の少ない深層格の組み合わせで表現された意味表示 (一種の深層構造) に帰着することを意味していた.だが,これは今日の格解析の実態にあっていない.実際,自動獲得された格フレーム辞書の内実を見ると,意味記述の粒度が深層格の概念が保持しえないほど詳細になっていることがわかる.従って,格フレーム辞書の記述対象を深層格の概念によって理解することは,その利用,構築の実態にあっていない.
     結論として言えるのは,現行の格フレーム辞書は,それが何の記述であるかが不明なまま「それが特定の用途に有用である」という理由で,構築,利用されている資源だ,ということである.
     これは「結果がよければ,すべてよし」の NLP の見地から見れば致命的な問題ではないかも知れない.ただ,「格フレーム辞書はいったい何の記述なのか?」という点に関して,理論的見通しがあって困るということはないだろうし,正しい見通しがあれば,新しい利用や構築の可能性に繋がることもあるだろう.
    本発表では,格フレーム辞書の記述対象が Berkeley FrameNet (Fillmore et al. 2003),並びに FOCAL (黒田ほか 2004, 2005; 中本ほか 2004) の定義する意味での「意味フレームの体系」であるということを,次の実証的データに基づいて提案する:

    A: 言語学者がコーパス事例の分析に基づいて特定した「襲う」という語の用法空間を規定する意味フレームの部分体系の記述的妥当性を(a)カード分類課題と,(b)意味素性評定課題によって検証した実験 (実験 1, 2)

    並びに,

    B: 無意味語を含む「襲う」文に認められる解釈のフレームへの「引きこみ効果」を素性評定法によって検証した実験 (実験 3)

    なお,時間があれば,これら三つの実験に加えて

    C: 言語学者がコーパス事例の分析に基づいて特定した「逃げる」という語の用法空間を規定する意味フレームの部分体系の記述的妥当性を (a) カード分類課題と (b) 意味素性評定課題によって検証した実験 (実験 4, 5)

    の結果についても報告したい.  私の提案が正しい提案であれば,それが意味することの一つは,深層格という概念を記述上の進歩にあわせて理論的に更新する必要がある,ということである.その方向性を探る意味表示のモデル化についても簡単に論じることができれば幸いである.

    発表が終った今にして思えば,意味特徴の共変動に関する具体例をちゃんと挙げるべきだったとか,幾つか反省する点もありますが,発表資料は修正なしで公開します.


  78. 意味フレームに基づく選択制限の表現: 動詞「襲う」を例にした心理実験による検討 (中本・黒田 2005)[PDF]
    これは6/25(土),26(日)に上智大学で開催される 第七回言語科学学会 (Japanese Society of Language Sciences) での口頭発表の予稿です.発表者は中本敬子さんです.

    UPDATE (06/30/2005): 中本さんが発表に使用したスライド (PDF)です.

  79. 6/15-17に小倉で開催される 第19回人工知能学会 で「複層意味フレーム分析の紹介: 領域を問わないオントロジー構築のための効果的な前処理として」 [PFD] (黒田・高梨・竹内・井佐原 2005) という発表 (2D1-02) をします.これは人工知能/知識表現研究者との接点の模索のようなものです.

    UPDATE (06/16/2005): 口頭発表に使った スライド (PDF) です.
    私の発表したセッション (2D1)で発表した 來村 徳信 さんと 砂川 英一 さんという方々 (二人とも『オントロジー工学』の著者である溝口先生の門下生のようです) の発表内容が私の研究と共通点が多くて,勉強になりました (なお,私たちのセッションの発表に限らず,人工知能学会での発表論文はすべて大会プログラムのページからオンラインで入手可能です).私としては,オントロジー研究と自分の研究に自分の思っていた通りの接点があること (例えば(意味)役割の概念が重要である点) がわかって,とても満足です.この点は,セッションが終った後に溝口先生や來村先生と議論し,確認したことです.頑張ってスライドを作った甲斐がありました(笑)

  80. 関西言語学会 (KLS) 第30回記念大会 に「[時間が資源である]としても,それは概念譬喩の結果だとは限らない」 (黒田・井佐原 2005b) という題で応募し,採択されました.発表要旨は このファイル (PDF) ですが,これはオンライン論文「概念メタファーの体系性は (文法の体系性と同じく) 錯覚ではないのか?」 [PDF] の後半の議論のみに焦点を絞ったものです.ただ,この論文はすでに22ページほどありますので,このまま KLS26 に載せるのはムリですね(笑)

    UPDATE (2005/06/03): 発表の際に会場で配付する ハンドアウト (PDF) です.今までは資料はくばらないようにしていたのですが,今年の春の言語処理学会でのトラブルを反省し,簡単な資料は配ることにしました.ただし,この資料は本番で使用するスライドと同じではないです.ご承知下さい.

    UPDATE (2005/06/03): おわび: 本発表の際に資料を配付できずに,まことに申しわけありませんでした.会場で配付するつもりだったハンドアウトを家に忘れてしまいました (徹夜して,寝坊して,慌てていたので...)

    UPDATE (2005/06/03): 発表の際に使った スライド (PDF) 版です.

  81. 02/26/2005 のKLCでの中本敬子さんによる口頭発表「意味フレームをめぐる心理実験: 実験意味論へ向けて」の スライド (PDF版) です.FOCAL研究グループを代表し,代理で公開します.

  82. 自然言語処理学会第11回大会 (香川大学) で予定されている口頭発表「複層意味フレーム分析に基づく意味役割タグつきコーパス評価版の公開」 (03/17: A5-3) [黒田・井佐原 2005a] の 予稿 (PDF),並びにその 改訂増補版 (PDF) です.

    UPDATE (03/13/2005): 口頭発表の際に使用する予定の スライド(PDF) です.会場では何も資料は配りませんので,本番前に公開しておきます.MSFA の実例はプロジェクターで見ただけでは,おそらく何が書かれているのかわからないと思うので.

  83. UPDATE 2 (03/18/2005): 本発表の際に支障があったことをお詫び申し上げます.時間がなくなったのと,細部が見えなくなったことで,MSFAの詳細に関する重要な点を幾つか説明できなくなったことが少し心残りです.事前のテストの際には,ちゃんと映ったんですがねぇ...マイナーな機種を使うと,こういう厄介事に巻きこまれる率が高いので,ちょっと悲しいです(笑)

    UPDATE 3 (03/18/2005):
    予告した通り,近日中に意味役割タグづけ評価版を公開します.ただ,京大コーパスの文にタグづけを行なっているため,現時点では公開には以下のような制限があります.

    1. すでに京大コーパスを利用してる方(すなわち,毎日新聞から記事CD-ROMを購入している方)の場合,意味タグづけ情報をお渡しには特に問題はありません.私の方までご連絡下さい.
    2. まだ京大コーパスの記事のCD-ROMが手元にない場合,タグづけ情報のみしかお渡しできません(これだけを入手しても,おそらくまったく有益ではありません).CD-ROMを新規購入する場合,単価は約10万円です.

    63文のために10万出してCD-ROMの購入をお願いするのは非現実的なので,NICTは63文に限って公開条件を無条件にできるよう,毎日新聞社と交渉する予定です.公開条件へのご理解をお願いします.

    UPDATE 4 (5/15/2005) お待たせ致しました.先日,毎日新聞社より,試験的に意味役割タグづけをした3記事(63文)に限って無償公開してもよいという許可を頂きました.ただし,データの公開にあたっては利用者がNICTとのあいだで同意書を交わすことが条件です.これは毎日新聞側の誰にデータを公開したかを正確に把握したいという意向に答えるためです.ご理解下さい.
    ■ ただ,63文全体の公開にはもう少し時間がかかりそうです... 準備が整い次第,このページ,あるいは FOCAL Wiki ページ でお知らせします.それまでお待ち下さい.

    UPDATE 5 (09/01/2005): 意味役割タグづけ評価版の第一次公開の開始のお知らせ

    お待たせしました.「京大コーパス」の断片への意味役割タグづけの評価版を予告通り公開します.ただし,今回は Round3 の結果のみです.なお,公開には以下のような条件があります:

    1. 利用にあたって毎日新聞データの購入は前提にはなりませんが,簡単な同意書が必要になります (これは毎日新聞からの希望を受けたものです).利用を希望なさる方は,私,あるいは FOCAL 関係者に連絡を取って下さい.私の連絡先はこのページの最初にあります.
    2. Webでのオンライン公開は現在準備中です.当面はエクセルのワークシートの形で配布します.
    3. Web での閲覧では (i) フレーム関係 (Frame-to-Frame relations) の可視化, (ii) フレーム要素の実現値の参照, (iii) フレームとフレーム要素の一覧などの機能が利用できます.これらの機能は,ワークシートのみでは利用できません.
    4. これらの機能が利用できる Web 閲覧は,利用にあたりアカウントとパスワードを必要とするセミクローズドの方式を採ります.従って,ワークシートの配布は Web 公開より利用できる情報が制限されています.
    5. アカウントの発行は, (i) 利用に際して悪意がなく, (ii) 枠組みの発展に積極的に貢献する意向のある方に優先的に行います.別の言い方をすれば,データ自体の公開はオープンですが,データから利用できる情報に,より多く,より簡単にアクセスしたいと希望される方には,より多くの協力への意志が求められます.私たち開発者と利用者の関係が互恵的なものであることを期待しております.この点はご理解下さい.


    2004年の仕事

  84. 日本語文法学会の第5回大会での口頭発表 (11/28/2004) 「比喩写像における"領域"は単なる副作用である: "YX に襲われる"に関する比喩写像の成立条件」 [黒田・野澤・中本 2004] で使用した スライド です.
    ■ 文法好きの人は意味フレーム基盤のアプローチに関心がないのか,それとも単に比喩に関心がないのか理由はわかりませんが,この学会で私たちの発表を聞いてくれた人はあまり多くなかったですね.
    ■ 今年の学会は,これでようやく一段落しました.発表が続くと,準備に追われて研究が進まなくて困ります.それから,口頭発表で「大きな話」ばっかりしていると,披露されている理論的見通しと実際に達成されている成果との落差,それを埋めるために,これやらなければならないことの膨大さを感じ,だんだん自己嫌悪を感じてきます.そういうのからしばらくサヨナラして研究に専念できるのは嬉しい(笑)

    UPDATE (01/22/2005): 予稿集に掲載された論文の 増補改訂版 です.

  85. 第29回関西言語学会での口頭発表「意味フレーム分析は言語を知識構造に結びつける」(10/30/2004)の際に使用予定の スライド です.本番までに修正の可能性はありますが,ドラフトの形で公開しておきます.なお,会場では紙資料は配りません.

    UPDATE (10/31/2004): 口頭発表の際にフロアから出た三つの質問に対する公式回答 を公開します.本日は,あまり言語学らしくない発表をわざわざ聞きに来て下さいまして,ありがとうございました.
    ■ 発表終了後に,私は黒宮公彦 (大阪学院大学) さんから「今日の発表は具体例が少なすぎて,日本認知言語学会でのワークショップの発表を聞いていない人には何のことかわからなかったのではないか?」という痛い指摘を受けました.確かに今日の発表は,ちょっと欲張りすぎたと思っています.言い訳になりますが,選択制限の話は元々,日本言語学会で話す予定だったのです.しかし発表の応募が通らなかったので,出血サービスで?本日の発表には二件分の内容がつめ込まれてしまいました(笑)実際,後半の統語論との接点に力点を置きすぎた従来のアプローチへの批判はもう少し控え目にして,多層意味フレーム分析の具体例をもっと少し詳しく解説する時間を作るべきだったと反省しています.これは重要な手法なので,ちゃんとした解説が必要です.近日中に本日の発表内容を論文にするつもりなので,そちらを参照して頂きたく思います.

    UPDATE 2 (12/26/2004) 発表応募原稿の 増補改訂版 です.

    UPDATE 3 (01/25/2004): 英語の概要です.

  86. 意味フレームを用いた知識構造の言語への効果的な結びつけ [黒田・井佐原 2004d]
    これは電子情報通信学会の「言語理解とコミュニケーション(NLC)研究会」での口頭発表 (11/04/2004, 16:30-17:00, 広島市立大学小ホール) のための予稿です.予稿とはいえ,分量はたっぷり与えられている...と思っていたら,知らないあいだに足りなくなってしまいました(笑).4節:「複層的意味フレーム分析」の内容がこの発表の中心であるはずなのですが,ここがイチバンすかすかです.言うべき内容はすでに決まっているのですが,締切が迫っていて修正している時間がなかったんですね.近いうちに補足した版を公開しますので,それまでお待ちください.

    UPDATE (10/09/2004):  増補改訂版 です.4節の内容を充実させました.今までは説明したことのなかった多層的(意味)フレーム分析 Multilayered (Semantic) Frame Analysis (M(S)FA) の細部に関して,わかっている限りで明示化を試みました.

    UPDATE 2 (11/05/2004): 口頭発表で用いた スライド です.先だって行われた KLS 29 での発表内容と重複が多いです.

  87. 選択制限は意味フレームに由来する という題で 日本言語学会 129 回大会 に応募してみました.春の大会では意味フレーム関係の応募が採用されませんでしたから,捲土重来です(笑)
    ■ それにしても,文献情報込みで1ページは少なすぎですよ!真面目に審査する気があるんでしょうか??? 年に二回大会を開いているから審査員の負担を減らすためなのでしょうけど,せめて文献を含めないで1ページにしたほうがいいんじゃないでしょうか? 一つ言えるのは,こういう風に投稿規定が極限まで限定されているということは,短くても何のことか見当のつく「内輪ウケ」の研究が通る傾向が強まり,外部者に対し,相対的に門が狭くなるということです.それがイイ方にゆくとは私にはとうてい思えませんが.
    ■ まあ,言語学会の審査にはそれなりにイイ面もありまして「6部提出」となっていますから,水増しをしていない限り,審査員が6名いるということですよね?(し,しかし,なぜ偶数人???)
    ■ 1ページの要旨に述べられなかった背景的考察は,論文形式の 要旨の下書き に明示してあります (これは書きかけで不完全な状態の研究ノートですが,それなりに有益な情報が盛り込まれているとは思います).

    UPDATE 09/14/2004: 「貴殿よりお申し込みいただいた発表につきまして,3名の大会運営委員会が覆面で査読,審査した結果,残念ながら 不採択 となりましたのでお知らせいたします」とあまりにアリガタイ通知を頂きました.まったく光栄でございます.
    ■ それにしても,この人たち,この方々,言語のいったい何について研究しているのか知りませんが,せいぜい学会ごと恐竜にならないように気をつけてくださいましと助言させていただきます.まあ,他人のことなどどうでもよいのですが,なるべく分野外からの評価が可能な研究をしないと,これからは生き残れないと思いますよ(笑)
    ■ それから,やっぱり審査員は3人じゃないですか! 何で6部提出???? 3x2 = 6ってコトでしょうか? 楽しいなあ.

    UPDATE (12/26/2004) などと,結構辛辣なことは書いたものの,今年の発表内容を見る限り,それほどメチャクチャでもないのかな?と少し考えを改めました.思っていたより生成系の発表は少なく,いわゆる「少数言語」---話す人の数も,研究する人の数も少ない言語---の研究が目立っていましたし,これはこれで正しい方向だと思いますんで.まあ,私どもの希望としては生成系の(得手して下らない)発表に分けてやるパイの一部を,意味の実証的研究に廻して欲しいということですかね(笑)

  88. 比喩写像における"領域"は単なる副作用である: 「YXに襲われる」に関する比喩写像の成立条件 [黒田・野澤・中本 2004a]
    この内容で 日本語文法学会第五回大会 (11/27(土), 28(日)) での口頭発表に応募しました.これは今年のはじめの「メタファーへの認知的アプローチ」での口頭発表 比喩理解におけるフレーム的知識の重要性 [黒田・野澤 2004a] の,その後の発展を含めた研究発表となります.今までは公表されていなかった細部について説明したいと思います.論点を簡単に言うと: (i) 比喩写像は意外に起こらないという意味で,「保守的」である; (ii) 「領域」あるいは「写像」という概念は比喩性の前提となるではなく,派生的なものである.
    ■これらのことを最初に言い出したのは私たちではないかも知れませんが,そういうことが特に重要なわけではないのです.私たちの提唱しているのは,新しい解釈ではなくて,新しい分析手法です.また,私たちが重要だと考えているのは結果の新規性ではなく,妥当性です.実際,私たちの結果は,基本データが作例ではなくコーパス基盤であり,かつ,その綿密なコーディングに基づいく一貫した手法から得られた結果であり,並びにその解析が心理実験の多変量解析の結果によって検証されています.これは,今までに存在しなかった新しい言語研究の方向づけだと私たちは自負します.これによって私たちは言語学の「解釈主義的伝統」に挑戦しています.

    UPDATE (10/08/2004): 発表予稿 が完成しました.しかも10ページも!潤沢です!!内容は,「襲う」の意味フレーム分析を基に,Lakoff-Johnson 流の比喩写像理論をかなり辛辣に批判しています.心臓の弱い方はお気をつけて(笑)
    ■ なお,私たちの発表は 11/28(日) 16:20-17:05 で,場所は関西学院大学です

    UPDATE 2 (11/28/2004): 口頭発表に使ったスライドです

  89. 意味フレーム分析は言語を知識構造に結びつける: 日本語の動詞「襲う」の場合 [黒田・井佐原 2004c]
    第29回関西言語学会 に意味フレーム分析の言語的な側面に焦点を当てた研究内容で口頭発表に応募しました.最近の KLC での発表 いわゆる「壁塗り交替」について: 構文は交替しない,選択される と同様,意味理解の際に名詞の指示以外の,名詞のフレーム意味論の重要性を認める (並列) 分散された意味論 ((parallel) distributed semantics) の必要性を訴える内容です.なるべく言語学者が読んでもぶっとんだ内容でないように抑えたつもりですが,どうなることやら...これとは別に (並列)分散された語用論 ((parallel) distributed pragmatics) も構想しています.そのうちに論文の形にしたいと思っていますが,なにしろ時間が...

    UPDATE (08/15/2004): 審査に通りました.幸い,言語学に関係ない「ぶっとんだ」内容だとは思われなかったようです(笑)
    ■ 話は変わりますが,関西言語学会は一時的な低迷期があったようなのですが,元のレベルに戻そうと真剣に努力している感じを受けます.査読者は現在5人で,私の知る限り,最大ですね.私は以前,査読者が3人だったときに発表が採用されなかったことがあります(笑)そのときに通らなかったのは,Langackerの認知文法の図法の批判と対案の素描で,それはIDTMの前身となる枠組みの提示でした.

    UPDATE 2 (10/27/2004): 発表の際に使用予定の スライド です.本番までに修正の可能性はありますが,ドラフトの形で公開しておきます.なお,会場では handout 等の紙資料は配りません.

    UPDATE 3 (10/31/2004): 口頭発表の際にフロアから出た三つの質問に対する公式回答 を公開します.本日は,あまり言語学らしくない発表をわざわざ聞きに来て下さいまして,ありがとうございました.

    UPDATE 4 (12/25/2004): 発表概要の 増補改訂版 です.

    UPDATE 5 (01/25/2004): 英語の概要です.

  90. 認知(科学)的に妥当なカテゴリー化の(計算可能)モデルを求めて: 「放射状カテゴリー構造」と「クラスターモデル」を越えて [黒田 2004c]
    今年の 09/18, 19 に関西大学で開かれる第5回日本認知言語学会の発表予稿集に載る予定の論文です.これは私の辛口エッセイ 「程度の問題」症候群を克服する の簡略版です.認知言語学を生成文法に対する単なる「反動」で終わらせないためにも,(少なくとも日本の)認知言語学会内部に存在する素性表現に対する根強い反感に対し,今度の大会では思うところを忌憚なく言わせていただきます.(一部の方々には迷惑がかかるかも知れませんが,なにぶん私も認知言語学内部の執拗な無理解には参っておりますので)

    UPDATE (09/18/2004): 口頭発表の際に使用した スライド PDF 版 です.「内部告発」の発表に意外に人が集まったので,個人的にちょっと驚きでした(笑)何はともあれ,ご静聴ありがとうございました.

  91. 第五回日本認知言語学会 (JCLA 5) のワークショップ第一室「意味フレームに基づく概念分析の射程: Berkeley FrameNet and Beyond」(09/18 (土),15:50-18:40 (予定))で (i) 黒田 航 (私), (ii) 中本 敬子, (iii) 金丸 敏幸, (iv) 龍岡 昌弘, (v) 野澤 元 が研究発表します.全体の見取り図は 提案書,私の発表の内容は 意味フレームに基づく概念分析の射程:動詞「襲う」の意味フレーム分析 [黒田 2004d] です.他の発表者の発表資料も,承諾を得て公開する予定です.なお,これは FOCAL という独自の意味フレームに基づく理論的枠組みの一環です.FOCALが Berkeley FrameNet (BFN) 並びに 日本語フレームネット (Japanese FrameNet: JFN) といかなる点で異なる枠組みであるかに関しては 宣言書 をご覧ください.FOCAL は BFN や JFN と特に矛盾はしませんが,認知科学や工学に対して言語学がどんな実質的な貢献ができるかに関して,ずっと真剣に考えています.これは FOCAL が [黒田・井佐原 2004a] の試みの基礎となる枠組みだからです.

    UPDATE (08/15/2004): 中本さんの発表の予稿は 意味フレームの実在性: HFN/FOCAL の心理学的妥当性の検証 です.

    UPDATE 2 (09/19/2004): Workshop へのご参加,どうもありがとうございました.準備は大変でしたが,なんとか無事,予想外の盛況のうちに終わることができました.とにかく私が驚きつつ感動しているのは「どこの馬の骨とも解らない」連中の研究発表に,あれだけ多くの人が関心をもって下さったことです.これは身に余る光栄であり,かつ,研究者としての大きな喜びです.重ねて,ご参加,ありがとうございました.
    ■ さて,黒田の口頭発表の際に使用した スライドのPDF版 です.なお,ほかのメンバーの発表資料もこのページから公開する予定です.

    UPDATE 3 (09/19/2004):
     ■  中本敬子さんが発表に使用した スライドのPDF版 です.
     ■  龍岡昌弘くんが発表に使用した スライド (PDF) です.

    UPDATE 4 (09/24/2004):
     ■  野澤元くんが発表に使用した スライドのPDF版 です.

    UPDATE 5 (10/08/2004):
     ■  金丸敏幸くんが発表に使用した スライドのPDF版 です.

  92. 状況理解の単位としての意味フレームの実在性に関する研究 [黒田・中本・野澤 2004a]
    中本敬子さん野澤 元くんと私の意味フレーム関係の共同研究の成果を,07/30(金)-08/01(日) の三日間,日本科学未来館(東京)で開催される今年の日本認知科学会 で口頭発表しようと応募したときの原稿です.ただし,最低限の情報しか載せてません.

     UPDATE 1: 審査に通りました.口頭発表の希望が通らず,ポスターになりましたが,ま,よしとしましょう(大会で,どんなにほかの口頭発表がスバラシイものぞろいなのか確かめさせてもらいましょうかね(笑)).
    論文に対するコメント:

    • アブストラクトだけからは,今回の実験や分析と主張には隔たりがあるように読めました.この関係をもう少し詳しくご説明いただければと思います

    適確な評ではありますが,ちょっと意地悪ですね.この研究には先例がないことぐらいは理解して頂きたいのですが...まったく先行研究がない研究の内容を,あのページ数で説明するのは曲芸ですよ.それとも,私の説明能力が足りないのですかねえ?? ま,それでも通してくれたんですから,言語学会の「賢い」審査員の方々よりナンボかマシです.

    UPDATE 2: 大会論文集に載せる 改訂版 です.しかし,たったの2ページ (せめて3ページは欲しいぞ!),そのうえフォントは 10.5pt 以上!という (ほとんど「何も実質的なコトは書くな!」と言われているのに等しい) 過酷な制限で書けることは極端に限られています...言いたいことの1/5も言えません (N本さんからは「強気ですね」と言われていますが,これでもずいぶんおとなしくしたつもりなんですよ(笑)).近いうちに「少なくともこれだけは言いたいぞ」版を公開しますので,お待ちください.

    UPDATE 3 (08/02/2004): 発表に使用したポスターの PDF版 です.以下,少し大会内容に関するコメントなど
    ■ 認知科学会の学会への参加は実は今回が初めてだったんですが,ポスター発表にせよ口頭発表にせよ,全体的に着眼点のすばらしい,知ることの喜びを与えてくれる面白い発表が多くて,満足でした.しかし,内容以前に,本人が研究を楽しんでいること,発見の喜びがあったことが発表からにじみ出ていて,聞いている人にもそれが伝わってくる発表が多かったと思います (これに比べると,言語学系の大会のなんとも地味でつまらないこと... 言語系には発表者が自分でつまらないと感じている研究を発表する人が多いように思います.そういう発表は,当然,聞いている方もつまらない).
    ■ さて,口頭発表の質に関してです.口頭発表は24件あり,全部聞きました.その中に一件だけスクリーンのプレゼンテーションを使わない「異例」の発表がありました.それは否定のスコープに関する心理実験結果の報告でした.多くの聴衆は困惑していました (笑).これが何を象徴しているかというと,言語系の研究者には相互適応,別名「歩み寄り」のための努力が足りないということだと思います.これに限らず,言語学系の研究の後進性は,ほかの研究分野に比べて明らかに際立っているように思われました.認知科学会のような学際性の高い学会で発表をするなら,言語学以外の研究分野の人が成果を共有できるような発表を心がけるのは,当然の努力ではないでしょうか?
    ■ 内容に関しては,本当に極々一部を除けばレベルも高く,内容も面白いものが多かったです.個人的に「スゴい!」「へえー」「な,なんと!?」と感心したもの,つまり「賢くなった」気にさせた発表を発表順に挙げると,以下の通りです: (1) 「共感に基づく人間とロボットのインタラクション」 (鳴海真理子・今井倫太), (2) 「なぜ他物の視線の方向がターゲットの検出を促進させるのか?」(川合伸行), (3) 「多数決型意思決定システムの適応的基盤」 (塚崎崇史・亀田達也), (4) 「洞察問題解決の制約緩和における潜在的情報処理」 (西村友・鈴木宏昭), (5) 「異なるコミュニティー間における共有理解構築過程の理解に向けて」 (中小路久美代・山田和明・安岡美佳), (6) 「発話における言いよどみの機能 (I)」 (田中豊富・齊藤洋典・荒川歩・大井京).イチバンどれがよかったかを言うのは難しいですが,個人的には (5) かな... 完成度の高い報告ではなかったですが,示唆に富んでいたのと,Keynote のプレゼンテーションでも,背景がモノトーンだったりして,発表者に抜群のデザイン感覚があることが窺われる,秀逸なデキでしたし.これは Negotiation of Meaning (Wenger 1999) という概念を紹介し,使用基盤アプローチ (usage-based approach) の基幹となる用法 (usage) が何によって決まるか,つまり慣習性 (conventionality) の本質を明らかにする方向性を示唆していて,理論的にも面白いと思いました.

  93. 動詞「襲う」の多義性: カード分類と意味素性評定に基づく検討 (原典版) [中本・野澤・黒田 2004a]
    日本認知心理学会第2回大会 (05/08(土), 09(日); 同志社大学) で口頭発表が予定されている研究発表の原典です.これは私が 21COE ワークショップ 「メタファーへの認知的アプローチ」 での口頭発表 比喩理解におけるフレーム的知識の重要性: FrameNet との接点 では具体的に紹介できなかった実験結果の報告です (解析が間に合いませんでした).FrameNetの手順に従って日英対訳コーパスから同定された「襲う」の12個のフレームがカード分類課題と意味素性評定課題の多変量解析(クラスター分析と因子分析)の結果と概ね一致すること示す内容です

    UPDATE: 中本さんが口頭発表に使った スライド (PDF) です.

  94. 日本語の意味(役割)タグ体系を定義する試み: FrameNet の視点から [黒田・井佐原 2004a]
    言語処理学会第10回大会〔東京工業大学〕でのポスター発表のための論文です.Dive into FrameNet の論文版と言った感じです.2.2節で FrameNet/Frame 意味論の(私の理解する)本質的有効性に関して簡潔に説明してありますので,有用ではないかと思います.本発表は P1 [ポスター(1)] 部で日時は 3月16日(火) 13:20-14:50 です.

    UPDATE 1: 発表に使用した ポスター (PDF) です.スライドの六枚目に FrameNet に準拠するタグづけ案がありますが,これは Berkeley FrameNet のシステムを,私が博士論文で開発した Pattern Matching Analysis (PMA) の知見を取り入れながら,独自に拡張したものです.一つに文に幾つものフレームが現れるという「複層的実現」の問題に対応しています(因みに,このようなコーディングをすると,フレームは実質的に,いわゆる「深層構造」と同じ役割を果たしているのが解ります.もちろん,表層と深層は「派生」で結びつけられているワケではありません.認知系の言い方をすると,表層系 (の意味構造) はフレームの「ブレンド」だと言えるでしょうね.この点がコーディングに PMA の知見が活かされていると私が言う理由です).本番での発表は,たいへん好評でした.皆さんの「熱い」期待に答えるべく,頑張ります(笑)

    UPDATE 2: 当日の発表内容を反映するように論文を改訂しました.題名も,「日本語の意味(役割)タグ体系を定義する試み: FrameNet の視点から」 [黒田・井佐原 2004b] と微妙に変更しました.

    UPDATE 3: (08/22/2004) 大会優秀発表賞を頂きました (証拠は ここ)ちょっとビックリしつつ,感動しております(笑)
    ■ 研究の方向性がまちがっていないと自信をもつと同時に,責任を感じます.どれぐらい期待に答えられるかわかりませんが,できる範囲で頑張って行きたいと思います.
    ■ ほかの受賞者の研究内容を見ても,自然言語処理では(形式意味論で取り扱われる「意味のカリカチュア」ではない)「自然で普通な意味」の処理の問題が大きな壁になっていて,それに対する突破口に対して潜在的な期待があるのだと思います.持論を繰り返しますが,この壁を破るための鍵を握っているのは,他でもなく言語学者です.文系の研究者の典型である言語学者 [注1] が理系の研究者と意見を交換できるようになるのは,それだけでも大変なことかも知れません.おそらくはじめは相手の必要としていることを理解するために相当の努力が必要だと思われます.ですが,そうするだけの価値は,絶対にあります.言語学内部の「内輪ウケ」にしかならないような「説明」に精を出す暇があったら,このような外部からの切実な需要に答えるような精度の高い記述的研究をするべきです.本当に正しい基礎研究には応用性が伴っているものです.
    ■ [注1]: 言語学の現状を見る限り,私には「チョムスキー派言語学が自然科学である」というチョムスキー派言語学者の主張は,絶対に受け入れられません (科学性に関して言うと, HPSG, LFG, TAG のほうが比べ物にならないほどマトモです).チョムスキー派言語学のやっていることは,観察的妥当性を犠牲した説明的妥当性の追求であって,それは単なる「自然科学(特に物理学)の真似事」です.なぜそうなるかと言うと,現在の言語学では理論的帰結の妥当性の評価が,理論構築のプロセスから独立していないからです.
    ■ 一般に,ある理論 T がある予測 P をするとき,P の妥当性の検証 validation V(P) は,T とは利害が独立した検証システム S によってなされる必要があります.どの分野でも確証バイアスの効果は強烈で,この条件が満足されない限り,妥当性の検証結果 V(P) は信頼の置けるものではありません.自然科学が非常にうまくいっているのは,実験系 S と理論系 T が見事に分離しているからです.物理学の場合,検証システム S は実験物理の分野が担っています.これは部外者にはあまり知られていないことですが,理論物理(特に素粒子論や宇宙論のように抽象性が高い理論)と実験物理のあいだには強烈な緊張関係が存在します.実験物理学者 (いわゆる「実験屋」) は,ナマイキで高慢な理論物理学者 (いわゆる「理論屋」) の鼻を明かしてやるのを生き甲斐にしています.
    ■ この基準に照らしてみれば,理論構築の利害から独立した検証プロセスを欠いたチョムスキー派言語学者の「説明」が,どれほど理論内部の「お家の事情」あるいは「利権」に癒着した,自家撞着的なものであるかは明白です.それは理論外部に,利害から独立した検証システムをもたないからです.そんなところから本当の意味での実証性,科学性が生じるとは,私にはまったく想像がつきません.

    UPDATE 4 (10/17/2004): 改訂版 [PDF] です.Pustejovsky の生成辞書理論 (Generative Lexicon Theory) のとの関連に関する内容を追加しました.ただし「 意味フレームを用いた知識構造の言語表現への効果的な結びつけ(増補改訂版)」との独立性を保つように,改訂の内容は控え目です.
    ■ 生成辞書理論はオモシロイですよ.認知系の人も「食わず嫌い」をしないで,ちゃんと勉強しましょうね(笑)基本的に面倒なのはラムダ記法 (λx[...x...]) だけです.記述に論理式を使うか使わないか,あるいはイメージ図式を使うか使わないかは,対象の特徴づけの妥当性とは無関係です.


  95. 2004/01/31 「比喩理解におけるフレーム的知識の重要性: FrameNet との接点」の口頭発表で使用したスライドのPDF版 [黒田・野澤 2004a]
    COEワークショップ 「メタファーへの認知的アプローチ」 での同名の口頭発表に用いたスライドを発表後に若干修正したもののPDF版です.これは下の オンライン論文 の論点を 20 分の口頭発表用にまとめたもので,議論の詳細は論文版を参照して下さい.コメント等,歓迎します.

    UPDATE: 口頭発表の際にフロアから出た質問への公式回答 [黒田・野澤 2004b]
    この中で取り上げている質問,コメント,批判によって私の考えは深化されました.この場を借りて,質問者の皆さまにお礼を申し上げます.

    UPDATE 2 (09/24/2004): オンライン論文 の参考文献の書式を変更し,補足的な議論をつけ加え,v2に改訂しました.


  96. 2003年の仕事

  97. 2003/10/19 概念化のID追跡モデルに基づくメンタルスペース現象の定式化 [黒田 2003d]
    関西言語学研究会 (KLS) 28 回大会 (神戸外国語大学) での発表に応募した論文と口頭発表で使用した PowerPoint スライド. この研究発表の目的は黒田 (2003a, b) での「M(t) はメンタルスペースと同一視可能であり,この点で IDTM はメンタルスペース理論の拡張という側面をもっている」というコメントに実質を与えることにあった。今回の発表ではフレーム意味論 (正確には FrameNet プロジェクトのフレーム意味論的な意味構造の記述にほとんど言及できなかったが,次の発表ではそれを目標にするつもり

    UPDATE (08/10/2004): KLS 24 に投稿した論文版 ですが,すでに 改訂増補版 も出ています.v1の内容にwhen節,before節,after節,if節(反事実仮定,単純仮定の両方)のIDTM流の扱いが追加してあります.この版が出版に間にあわなかったのは残念です(笑)

    UPDATE 2 (01/12/2005): Remarks on Identity, Similarity, and Other Related Puzzles [PDF] でメタID集合の概念が修正,拡張されています.

  98. 2003/9/14 概念化のID追跡モデルの提案: 認知言語学の図法の拡張 [黒田 2003b]
    日本認知言語学会 (JCLA 2003, 明治学院大学) での発表内容のアブストラクト, 基本的には下の『言語研究』に投稿して採択されなかった論文 (黒田 2003a) の短縮版,ならびに口頭発表に用いたPowerPoint スライド

    UPDATE (07/27/2004): この発表に基づく論文が今年の『日本認知言語学会論文集第4巻』 (JCLA 04)に"概念化の ID 追跡モデル"の提案: 「認知文法」の図法を制約し,概念化の効果的な視覚化を実現するために [PDF] という題で載ります.英文の要約 [PDF] もあります.


  99. 2002年以前の仕事

  100. 2000/11 Presenting the Pattern Matching Analysis, a framework proposed for the realistic description of natural language syntax [日本英語学会第 18 回大会(甲南大学)での口頭発表]
    非常に不幸なことに (あるいは幸いなことに) Joan Bresnan の最適性理論関係の講演と重なって,この「正体不明」の研究発表を聞きに来た人は,知りあい以外,ほとんどいなかった(笑)

  101. 1994/11 日本語の接続表現と文法の "進化": '-(な)のに' の場合. [関西言語学会での口頭発表]